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日々の記録

まことに人生 一瞬の夢 ゴム風船の美しさかな 中原中也

部屋の整理をしようと思ったのに、別にしなくてもいい気がしてきてやめた。

最近は毎日、1日中、小説を読んで終わっていく。学生の頃はタイトルや装丁で読む本を決めることが多かったのに、最近は作者で決めてしまう。男性作家の本は暫く読んでいない。別に何も悪いことではないけれど、本を読めば読むほど思考が偏るっていうのが分かる気がする。部屋の本棚は女性作家ばかりで、岩波文庫のシンプルさも好きだったのに新潮文庫のカラフルな背表紙の方が好きになってる。

先日、ふと思い立って大学の授業でもらった近現代文学の年表の中から、読んだことのない本を買ってきた。児童書のコーナーに行くと小学生の頃に読んだ本がたくさん並んでいてつい嬉しくなったり。「こまったさん・わかったさん」「ぞくぞく村」「怪談レストラン」「もりのー」「かいぞくポケット」シリーズ、図書館便りの新刊コーナーをチェックして図書館に予約しに行ってたなぁとか。6年間もらい続けた多読賞と図書カードを今でも大切に保管していることとか。古本コーナーに並んでいる最近発売されたばかりの本を見て「これは誰かのお気に入りになれなかった本かな」とかを思った。そして私も本を数十冊、手放した。本棚が空くと心もスッと軽くなったような感じがすると同時に、心を占める文字の重さにギョッとする。それから、久しぶりに森鴎外の『雁』を読み直したりもした。本棚から出てきた卒業論文の計画書のコピーには、提出最終日の日付と ”日本語教育太宰治?悩ましい! "の走り書き。懐かしい。大学生の時は太宰治の文章が好きだった。卒論に太宰治を選んでいたら今の私は居ないんだろうな。

好きな言葉を書き溜めているルーズリーフを1枚ずつめくる。そんな余裕のある暮らしを幸せに思う。けれど時間はあるほど良いのでもなくて、その分、考えることも多くなっていく。良いことばかりじゃない。そうやって1枚ずつルーズリーフをめくっているうちに、もう十分幸せなのに…と思えてきて、この瞬間に死んでもいいのにと思う。中学生の頃にメモした詩と同じ詩を数年後にもメモしていたり、高校生の頃にメモした詩が今では刺さらなかったり。変わっていくことが最近はすごく悲しくて仕方がない。 ただ本を読んで、文字に触れて、美しいものを見て、そうやって生きていけたら全体に幸せになれるんだろうか。

 

レコードが無音を擦る冬の部屋君の理性は美しすぎる 鈴木晴香

だれからも愛されるという幻想の崩れてサイダーを振る 盛田志保子