「 朝のリレー / 谷川俊太郎 」カムチャッカの若者が
きりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が
ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は
柱頭を染める朝陽にウインクする
この地球では
いつもどこかで朝がはじまっている
ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交替で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
朝の5時、カーテンを開けても外は真っ暗。支度して外へ出るのは6時半ごろ。ソンテウに乗っているあいだの約40分の無。学校に到着する前に9バーツを握りしめる。門をくぐって受付に行き、サインをして職員室へ行く。日々はその繰り返し。タイではオミクロン株が拡大していて、まだオンライン授業が続きそう。もうオンライン授業の方がいいのかもしれない。ずっとオンラインでいいのかもしれない。そんなふうに思うこともある。
私が暮らしている町は、PM2.5や自動車の排気ガスのせいで空気が汚い。どれくらい汚いかというと、AQI(空気質指数)が150を超える…。昨日なんとなくアプリを開くとAQI168、ため息。肺いっぱいにきれいな空気を吸い込むことができるのも幸せなことなんだと気づいた。毎朝、ソンテウを追い抜いていくバスの排気ガスを浴びながら出勤していると、目の前の霞みがPM2.5なのか、朝靄なのか分からなくなる。
正月休み明けに同僚が誕生日を祝ってくれた。授業を終えて職員室に帰ると、ケーキを持った同僚たちが私の机に。その瞬間、いろいろなものが込み上げてきて涙が止まらなかった。「どうして泣くの?」って言われてもわからなかった。嬉しくて、悲しくて、寂しくて、虚しくて、幸せだから泣いた。それから、タイの伝統的な布で作られたスカートをプレゼントしてくれた。タイは曜日ごとに色が決められていて、曜日ごとに服の色が決まっている。私の学校では金曜日は伝統衣装の日。私は公務員じゃないけど、今週はそのスカートを履いて出勤した。外国人が伝統衣装を身につけるというのはぎこちない気もするけど。
楽しいこともたくさんある、嬉しいことも、笑ったことも、たくさん、たくさんあるはずなのに。