kiroku

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日々の記録

戦争

深夜、テレビで第二次世界大戦中の映像が流れていた。ナレーターが「精神力と銃剣で挑む日本兵アメリカ兵はマシンガンで撃ち抜いた」「右へ逃げても、左へ逃げても、雨霰のように降り注ぐ弾丸、耳が壊れるほどの銃声だった」と言う。テレビを見ながら祖母が言う。「私の1番上の兄も戦争に行ったの。私は小さくて戦争のことはよく覚えていないけど、兄が戦争に行ったおかげで家は畑をもらったの。その畑で11月に芋を収穫したの。」と。祖母が続ける。「外で遊んでいたとき空からキラキラしている何かが降ってきた。ちょうど畑から帰ってきたお父さんに「何でこんなところにいるんだ」って怒られて。お父さんは私を抱き抱えて家まで走って帰ったの。あれは爆弾だったのかもしれないって後から思ったよ。」と。急に戦争を身近に感じて、映像で死体を見るのとは違う怖さがあった。戦争を体験した人が、戦争の記憶を持った人が、自分と同じ時間を生きていて、その記憶を鮮明に話し出すことが怖かった。

歴史の授業で習った戦争が、2020年代になって繰り返されるなんて。自分が生きている間にこんなことになるなんて。歴史で習ったように、戦車が街を走っている。銃を抱えて兵士が歩いている。市民は巻き込まれ、大切なものを失っている。戦争が始まる瞬間を、死んでいく人を、正義を振り翳し人を殺す兵士をリアルタイムで見ることになるなんて。大切な人と離され、生きているかも分からず、それでも生きていると信じて自分も生きることの苦しみを想像して胸が押しつぶされる。

9月21日、プーチン大統領は第2次世界大戦以降、初めて動員例を出した。30万人を想定していること、総動員の場合は2500万人にもなると。プーチン大統領の会見後、ロシア発の航空券は軒並み売り切れ、航空券は100万を超える値段がつき、ロシアは18歳〜65歳の出国を禁止した。ここまで、すごく早い対応だった。本当にあっという間に。報道もインタビューに答える市民の本音も真実は分からないけれど。ロシアによるウクライナへの攻撃を肯定していたロシア人が、自分も召集される可能性を知ってデモに踏み切る様子に胸が苦しくなって。

子どもが召集されたロシア人が泣きながら訴える。「戦争は良くない。子どもを返してほしい。」と。ロシアの攻撃によって子どもを失くしたウクライナ人が、数ヶ月前に同じことを言っていた。召集状…息が詰まる。

分かっている。誰だって自分や大切な人を守るために、自分の信念に基づき最善を尽くしている。ロシア人もウクライナ人も、支援する国も、傍観している国も、それぞれの立場で道を踏み外すまいと生きている。けれど、分かっていても辛い。

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アメリカのNATOスミス大使は「ロシアが核戦力の使用に踏み切った場合、我々は準備ができている。」と話した。ロシアが核攻撃を行ったら、条約を結んでいる中国がロシアと共にウクライナを攻撃したら、アメリカが準備しているという計画を実行したら。戦争にNATOが加わったら。アメリカに日本も加勢しろと言われたら。中国が台湾に手を出したら。世界第三次大戦が始まるのでは。そんな最悪のシナリオばかりを想像してしまう。

この瞬間にも死んでいく人がいて、大切な人を失った人がいて、自分は何もできなくて。

いつだって無力。